先日、『歯科疾患実態調査』が厚生労働省より発表されました。
『歯科疾患実態調査』とは、5年に一度、国が国民の歯科保険の状況を把握し、今後どのような、歯科保健衛生に役立てればいいかを検討するための資料の一つです。
我々、歯科医療従事者も、近年の動向を知るために、注視しています。
残念なことに、調査数は年を追うごとに減少しており、今回の調査を受けた人数は、2709人です。
一般的に、数が多くなれば多くなるほど、信頼度の高いデータとして扱われます。
もっとも、この規模の調査数は、国内の学術論文でも稀な大きい規模の数値ですので、非常に参考になります。
調査によると、子供の虫歯は、年々減少傾向にあります。
下のグラフは各年齢ごとの虫歯がある人の割合を示したものです。
このデータは、虫歯をすでに処置した歯も含まれるので、実際にはこの数値より低くなります。
注目していただきたいのは、全体として数値は下がっているものの、各年齢層における虫歯のある人の割合の順位はあまり変わっていない点です。
グラフによると、「6〜8歳」の虫歯の割合が最も高く、「12〜14歳」の虫歯の割合が最も低くなっています。これは、乳歯は虫歯になりやすいことと、乳歯が抜けて完全に永久歯になったことが主な理由と考えられます。乳歯はいずれ抜けるので、虫歯のままでも問題ないと解釈することもできますが、乳歯の虫歯が、隣の永久歯に飛び火してしまう恐れもあるため、乳歯の時の虫歯予防や生活習慣の改善、フッ素などによる虫歯予防処置は、大切になります。
一方で、大人の虫歯は減少していません。
成人後に虫歯のある人の割合は、約30%で推移しており、約3人に一人が、虫歯のある状態です。初期の浅い虫歯は、自覚症状がありません。かなり大きな虫歯になると、歯がしみたり、痛みが出たりするため、早く虫歯を見つけられるよう、定期検診が必要になります。
また、8020(80歳で20本の歯がある人)達成者の割合は増えた一方で、高齢者の虫歯が増えています。高齢になると、糖尿病などの基礎疾患、年齢や薬による唾液量の減少や、脳血管障害・認知症などによる身体機能の制限による歯磨き不足により、虫歯や歯周病がおこりやすくなっています。このような状態を放置すると、抜歯せざるを得なくなり、ご本人にとって処置の負担が非常に大きくなります。そうならないために、定期的な歯の検診やクリーニング、適切な予防処置が重要です。
グラフ、図:令和4年歯科疾患実態調査(厚生労働省ホームページ)より引用