虫歯と歯周病は、歯科の2大疾患です。今回は、歯周病に焦点を当てたいと思います。
歯周病は、歯周病菌によって起こる病気です。
歯周病は年齢が進むにつれ、罹患率が高くなります。平成28年の歯科疾患実態調査では、歯周病と診断される方の割合は40歳以上で約45%以上となり、約半分の人が、歯周病になります。また、歯周病は厄介な病気で、多くの場合で無症状であることが多いです。
歯茎(歯肉)にできる病気は、いろいろあり、歯周病は、歯周病菌によって歯茎のみならず、歯を支えている骨や骨と歯を結んでいる組織が破壊される病気をいいます。
歯茎(歯肉)のみに炎症があるものを歯肉炎といいます。多くの場合が、まず、歯肉炎になり、その状態が続くことで、知らず知らず歯周病へと移行していきます。
歯肉炎の場合は、歯茎のみの炎症なので、治ると元どおりなのですが、歯周病の場合は、骨や周りの組織まで破壊されてしまうので、完全に元どおりになることは、困難です。
現在では、骨や周りの組織を再生する薬を歯に塗ることで、一度失われた組織を再生する治療もあります。しかし、歯周病で大きく組織を失った場合、完全に元に戻すことは困難です。
また、歯肉炎は適切な歯ブラシで改善しますが、歯周炎まで進行すると、歯ブラシが届かないところまで歯周病菌が巣食います。それは、歯を支える骨が歯周病で溶けてしまって、歯と歯茎の間が長くなる(歯周ポケットといいます)ことで、その間に歯周病菌が増殖してしまうからです。そうなった場合、歯科医院で、歯石を取ったり、歯周病菌を専用の機具で歯周病菌を除去しないと、改善しません。ですから、歯周病になる前、歯肉炎の段階で予防して、正常な状態に戻すことが重要になります。
歯周病の進行に関する特徴ですが、様々な要因があります。
・歯周病菌が歯につきやすい口の中の状態である。
歯石がある。歯並びが悪く歯ブラシがしにくい。段差があったり、隙間があったりと歯に合ってない詰め物や、かぶせがある。歯に物がつまりやすい。口呼吸している。歯の根元に虫歯がある。歯周ポケットがある。が挙げられます。
・特定の歯のみに強い力がかかっている状態である。
噛み合わせが高い詰め物やかぶせがあると、このような状態になります。噛み合わせが高くなくても、食べ物を食べるときに、そこだけ引っかかる歯があったり、歯ぎしりで、強い力が加わる場合は歯周病を悪化させます。
・場所によって、進行しないところと進行するところがある。
全ての歯で、同時進行で同程度、進行することは、まれです。多くの場合が、場所によって、歯周病がひどいところがあったり、全く問題ないところがあったりと、進行具合に、その人の同じ口の中でも、差があります。
・歯周病が進行しない時期と進行する時期がある
歯周病が進行する時期と進行しない時期があります。進行する時期になると、歯を支える骨が急速に溶かされてしまいます。
残念ながら、現在、いつ進行する時期になるのか、今が進行している時期なのかそうでないのかを一回の検査で判断する方法がありません。
しかし、歯周病菌がいない状態なら進行はしないので、毎日の適切な歯ブラシや、定期的な歯科検診により、その状況を理解することや歯周病菌の除去が必要になります。
・歯周病が進行すると悪循環に陥る
歯周病菌により、歯を支える骨が溶かされ、歯周ポケットが作られると、歯ブラシが届かないので、さらに中で細菌が増殖し、さらに骨を溶かしていきます。その結果、歯を支える骨が少なくなり、物を噛む力に耐えられなくなり、歯に動揺します。これによって、細菌がさらに増殖しやすい環境になり、歯周病がさらに進行します。
歯周病の特徴にはこのようなものがあります。
この特徴から、歯周病の治療のポイントは、重症化する前に治療する方が良い。残念ながら、もし、重症化した場合でも、再生療法などの手術を行うことで、改善しますが、完全に元どおりに戻すことは困難です。
また、お口の中の細菌を0にすることはできません。歯周病は、誰しもがなる可能性があります。なので、定期的な歯科検診により、今の状況の把握と各個人にあった歯周病の予防方法や対処を歯科医院で受けることが重要です。